エリア情報
東に天竜川、西に浜名湖、南は太平洋を臨み、北に数々の名峰を抱く遠州エリア。徳川家康が築いた浜松城下の発展を端に、天竜川が湛える豊富な清水と温暖な気候で綿花を育て、南アルプスの麓から切り出した木材で機織り機が作られました。江戸時代、機織りは農民の冬仕事として、幕末の藩士の内職として盛んになりました。
明治末から大正時代にかけては、現在の「トヨタ」や「スズキ」の創業者たちが動力を使った力織機を開発したことから、綿織物の生産性は飛躍的にアップ。こうした技術を軸に、その後は楽器・自動車・工作機械・健康医療・精密機器・宇宙航空産業など日本を代表する多くのモノづくり産業やベンチャー気質が育まれました。遠州の繊維産業が静岡の名だたる企業の礎を作ったと言っても過言ではありません。
また、浜松にある「初生衣(うぶぎぬ)神社」は、平安の昔から伊勢神宮へ神に捧げる衣服を納める大役を担ってきました。ここでは神衣を絹で織っていた「織姫様」が祀られ、神衣を伊勢神宮へ奉納する神事「おんぞ(御衣)祭り」が現在でも続けられています。技術だけでなく、由緒ある伝統にも裏打ちされた産地、それが遠州です。
有限会社ぬくもり工房 / 社屋
ブランドストーリー
江戸時代から続く遠州の綿織物、別名「遠州綿紬(めんつむぎ)」の最大の特徴はその縞模様にあります。数百年の歴史の中で、数千種類ものさまざまな縞柄がデザインされてきましたが、この「日本の縞」を何より大切に考えているのが浜松市に事務所とお店を構える「有限会社ぬくもり工房」さんです。
遠州綿紬の種類には、濃い紺色の生地にストライプ模様の「遠州縞」、目にも楽しい多色使いの「縞紬」、独特の凹凸感がある「無地紬」、七色の糸で織った「なないろ紬」などがありますが、ぬくもり工房さんでは日本の四季が感じられる多彩な色調の縞模様にフォーカスし、着物の他、普段使いの雑貨やプレゼント用の小物などをデザイン・販売しています。
例えば、柔らかで繊細な縞模様、幅や間隔に強弱のある縞模様、四季折々の自然美を反映させた多彩な色調の縞模様など、取り扱う遠州綿紬は150パターン以上。反物はもちろん、オリジナルブランドの「つむぐ」では、ハンカチ、扇子、メガネケース、かばんなど、毎日の暮らしの中で楽しめるアイテムを提案中。また、星野リゾートさんとコラボした「界遠州」では、客室内のファブリックを担当。美しくあたたかみのある遠州綿紬の素晴らしさをさまざまなシーンでアピールし続けています。
開発秘話
伝統工芸品である遠州綿紬をもっとたくさんの方々に知ってもらいたいという思いで活動されているぬくもり工房さん。良いデザインを考えるのも、見せ方・売り方を考えるのも、代々受け継がれてきた産地を次世代に引き継いでいきたいから。
最初はピンとこなかった「DN・ねこアースプロジェクト」の話。よくよく考えてみると、「はぎれネズミ」という新しい切り口で遠州綿紬をアピールできる機会なのでは?猫を通じて遠州産地の想いを届けられる先をもっと増やせれば、技術や伝統を途切れることなく未来へ伝えていくことができるはず。江戸から現代まで紡いできた遠州の繊維産業こそ、SDGsの活動そのものだと思い至り、ご協力いただけることになりました。
実はぬくもり工房さん、デザインや販売を専門にする会社さんなので、はぎれや残反など未利用繊維はそんなにたくさん出ません。しかし、産地では大量に廃棄せざるを得ない生地を持て余しているところも多いとのこと。「産地の継続と発展」をビジョンに掲げている会社として、廃棄を減らしつつ産地をアピールできるこだわりのネズミを模索。何度も試行錯誤を重ね、遠州綿紬のあたたかみのあるはぎれネズミが誕生しました。